メック株式会社が長年にわたり蓄積してきた電子基板・部品製造用薬品の開発および製造技術を基に、
画像認識AIソリューションPictel が誕生。
画像を数値化する技術により、異常検知、プロセス改善、工場DX、危険(安全)検知を実現し、研究開発、生産、
検査での活用を広げました。
その開発ストーリーを紹介します。
メック株式会社は、電子基板・部品製造用薬品の開発および製造という製造メーカーですが、なぜAIの開発を始めたのですか?
フロンティア開発室 室長
中根(以下、中根):
コア業務として電子基板・部品製造用薬品の開発を行っている私たちは、製品の品質向上を目指して日々研究を続けています。その中で、製品の精度をさらに向上させながら製造コストを削減する手段として、AIの利用を模索し始めました。
このようなAIを開発することで、同じような課題を抱える企業の皆さまにも役立ててもらい、それが社会貢献にもつながると考えました。もちろん、メックの市場価値を高めることも視野に入れています。
AIの開発を始めてから製品が完成するまで、どのようなステップやフェーズを経てきたのですか?
フロンティア開発室 開発マネージャー
赤木(以下、赤木):
AI開発プロジェクトを始めたものの、何から手をつければ良いかわかりませんでした。まずAIについて学ぶため、約1年半(2019年10月から2021年3月)大学で研究員として活動しました。そこで、さまざまな薬品やテーマでAIを使った予測の可能性を探索し、データ収集や実験を繰り返してコア技術を習得しました。
その後、2022年からは大学など社外の専門家と実証実験を重ね、2023年にようやくメックとしてのコア技術を確立し、社内の開発チームが発足しました。現在、チームは中根を筆頭に、データサイエンティストや撮像担当者、バックエンド/フロントエンド開発者などで構成されています。
使用した技術やアルゴリズムについて教えてください。
赤木:
使用した技術は、ニューラルネットワークベースのアルゴリズムです。画像から特徴を抽出することが重要なため、このアルゴリズムを採用しています。また、初期から現在に至るまで、新規性のあるアルゴリズムを開発し続けてきましたが、私たちの目指すところは、効率的かつ迅速に問題を解決することですので、カスタマイズするだけでなく、公開されているオープンソースを保有データに適用することも非常に重要だと考えています。
主な困難や課題は?また、それらをどのように克服したのでしょうか?
中根:
AIのコア技術はあるものの、インフラ構築やフルカスタマイズが必要なため、顧客ごとに仕様を決定しアプリケーションに落とし込む点にはまだ課題があります。データをユーザーが求める価値のある情報に昇華させ、それを使いやすい形でアプリケーションとして提供することは、製品化の醍醐味でありながら、非常に苦労した部分です。
新規事業のため、最初の販路確保も苦労しました。販路形成では、仮説を立て、その検証のために専門家からのコメントをいただき提案を磨きました。それらの提案を企業マッチング支援を活用しながら、コミュニケーションチャンネルを確立して、協業先を見つけました。
赤木:
社内にAIの専門知識を持つ人材が不足していたため、大学や学会で専門家を探し、直接会ってお話を伺いました。AI導入のメリットや価値、導入の理由を定義するのに苦労しましたが、見せ方を工夫し、トータルソリューションとしての効果をアピールすることで乗り越えました。
また、この画像認識AIソリューションを実現するためには、データの入手が難しいこと、実験場所や利用できるアセットが不足していることも課題でした。これを克服するために、メリットを感じてもらえるよう工夫し、社外の方に人脈の紹介をお願いして解決しました。
開発した画像認識AIソリューションPictel の主な応用分野や用途は?
中根:
製造業では、品質管理と検査工程のニーズには2つの主要な理由があります。
1つ目は、厳しい検査箇所での全数検査にAIが有効と期待される点です。
2つ目は、人手不足を解消するための脱属人化です。
将来的には、単なる品質検査だけでなく、AIによる検知画像を活用してプロセス改善が期待されます。
具体的な活用例としては以下が挙げられます。
●製造業の製品検査
●製造業の生産工程管理
●環境アセスメント
●発電システムの効率化
開発したAIの成果や効果についての具体的な事例
中根:
製造業の事例
製品の過検出品をAIで解析し、原因を特定することができました。検査数が多くても短時間で解析・集計が可能で、数万点のデータからキズなどの傾向を可視化しました。その結果、製造プロセスの改善に役立ち、過検出の原因を減らすことができました。
再生可能エネルギー分野の事例
共同研究事例で詳細はお話しできませんが、魚の検知にカメラ画像を使用した場合、従来は人手で魚をカウントしてデータ化などを行う必要がありました。しかし、この手法では範囲が広くデータ量も膨大となると現実的ではありませんでした。このような場面でもAIを活用することで短時間で対象エリアの状況分析が可能になります。
社内利用の事例
主力商品の品質担保にAIを活用しています。
AIの今後の展開や活用方法、技術の進化、新たな課題についてどう考えていますか?
中根:
大規模言語モデル、例えばChatGPTの登場により、AIの活性化が進んでいます。大規模データをプラットフォームで取得し、個人ユーザーを取り込む動きが活発化しており、巨大企業が独占する状況も想定されます。BtoBでは、品質と対応力で集客しないと競争に勝てないでしょう。
この分野はトレンドの変化が非常に速いため、技術の進化も目まぐるしいです。新たな課題に対しては、一つずつ丁寧に対応していく必要があり、社内外の専門家の力をお借りしながら対応していく所存です。
赤木:
人口減少や高齢化を考えると、AIの普及は進むと思います。ChatGPTの登場で、特に言語や顔認識の分野でAIの認知度が高まり、現実味を感じる人も増えました。課題はAIを使う人間側の倫理観や判断力のすり合わせのフェーズに来ていると思います。
製造業などでは、まだAIを活用するためのデータが不足していることが多く、そこに大きなミスマッチを感じます。アルゴリズムの進化はもちろん、データ、ハードウェアのスペック、インフラ技術、そして使う側の理解度が揃ったとき、大きな発展があると期待しており、それを間近で体感したいと思います。
開発者から課題の解決方法を模索している方へ
中根:
AIはデータ活用の手段の一つです。汎用的で安価なものから、高価なカスタマイズ品までさまざまな種類があります。汎用のAIで失敗しても、それだけでAIがダメだと判断しないでください。私たちは「できないこと」を「できる」とは決して言いません。貴社に最適で実現可能かつ持続的なAIアプリケーションをご提供します。
赤木:
難しい環境でAIの効果がわからない方、データ撮影やデータベース化から始めたい方、既存の装置にAIを組み込みたい方など、ぜひお気軽に私たちにご相談ください。
画像認識AIソリューションPictel は、業種業態に合わせたカスタマイズをすることで、
“本当に使える画像認識AI”を実現し、お客さまの業務課題を解決します。